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鈴木 健一 教授研究グループの論文がNature Communications誌に掲載されました

 岐阜大学糖鎖生命コア研究所教授/国立がん研究センター研究所先端バイオイメージング研究分野分野長鈴木健一、岐阜大学糖鎖生命コア研究所研究員廣澤幸一朗らの研究グループは、東北大学、東京大学との共同研究で、新しい超解像顕微鏡観察法を開発し、細胞外小胞が標的細胞に取り込まれる機構を解明しました。
 近年、細胞間の情報伝達の担い手として、細胞外小胞注1)が注目されています。しかし、標的細胞に取り込まれる機構はよく分かっていませんでした。また、細胞外小胞には様々なサブタイプがあると示唆されているため、その各々の挙動を観察する必要がありました。そこで本研究では、細胞外小胞を1粒子ずつ観察しつつ、標的細胞の取り込み関連分子も空間精度21nmで、疑似リアルタイムに超解像顕微鏡観察する手法注5)を開発しました。この新しい顕微鏡観察法を用いることで、細胞外小胞には分子組成と膜流動性が異なるサブタイプがあり、その一部はカベオラ注3)経由でも取り込まれること、すべてのサブタイプはその表面にある、糖鎖結合タンパク質ガレクチン3の相互作用を介してクラスリン注2)非依存性エンドサイトーシス注4)経由で取り込まれることを明らかにしました。また、細胞外小胞は、標的細胞膜結合後、直ちにその直下で接着タンパク質による信号伝達が誘起され、引き続き起こる標的細胞内カルシウム濃度上昇が、細胞外小胞の取り込みを促進することを明らかにしました。
 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST(研究領域:細胞外微粒子に起因する生命現象の解明とその制御に向けた基盤技術の創出)の一貫として行われました。
 本研究成果は、日本時間2025年3月12日にNature Communications誌のオンライン版で発表されました。

 

【研究のポイント】


 

・細胞外小胞は様々な細胞から分泌されますが、同じ細胞から分泌される場合でも、膜の硬さや構成されるタンパク質が異なるサブタイプ(亜種)が存在することを見出しました。
・全てのサブタイプが、糖鎖結合タンパク質注7)(ガレクチン3)を介して、クラスリン非依存性エンドサイトーシス経由で取り込まれること、一部のサブタイプの細胞外小胞は、カベオラ経由でも取り込まれることを明らかにしました。
・細胞外小胞が標的細胞膜に結合後、直ちに接着シグナルが誘起され、標的細胞による取り込みを促進することを明らかにしました。
・細胞外小胞動態の理解が進み、医学・薬学分野への展開が期待できます。

◆ 詳細はこちら (岐阜大学ホームページ 外部リンク)

 

【用語解説】


 

注1)  細胞外小胞
ほとんどの細胞から分泌される直径40~1,000nmの小胞。細胞内のMultivesicular endosome(MVE)由来のもの(エクソソーム)と形質膜由来のもの(エクトソーム)がある。
注2)  クラスリン被覆ピット
細胞膜から直径100-150nmのクラスリン被覆小胞の形成によって行われる細胞内取り込み機構。鉄イオンの輸送に関わるトランスフェリン受容体など多くの受容体分子がこの機構により内在化される。
注3)  カベオラ
細胞膜に存在する直径50-90nmのフラスコ状の凹み、カベオリン分子の多量体によって形成される。コレステロールやスフィンゴ脂質に富み、脂質の取り込みやシグナル伝達に関与すると考えられている。
注4)  エンドサイトーシス
細胞が細胞外や細胞膜上の物質を取り込む機構。細胞膜が内側に凹み、物質を包み込んで小胞を作り、細胞内に取り込む。
注5)  超解像顕微鏡法
従来の光学顕微鏡では観察不可能な光の回折限界以下の分解能に到達する顕微鏡法。複数の方法が考案されているが、本研究では蛍光1分子観察技術を基礎とした PALM(光活性化局在性顕微鏡法)またはdSTORM(直接確率的光学再構築顕微鏡法)を用いた。
注6)  2値化画像
画素値をあるしきい値以上と未満の2色に変換した画像。取り込み分子の超解像画像を2値化することで取り込み領域の輪郭から細胞外小胞の中心までの距離を測定し、定量的な共局在解析を行うことができる。
注7)  糖鎖結合タンパク質(レクチン)
様々な糖鎖(グルコース(ブドウ糖)などの糖が鎖状につながった物質)や糖と選択的に結合するタンパク質の総称。糖鎖と結合するタンパク質であっても、抗体はレクチンに含まれない。

 

【論文情報】



雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Uptake of small extracellular vesicles by recipient cells is
facilitated by paracrine adhesion signaling
著者:Koichiro M. Hirosawa, Yusuke Sato, Rinshi S. Kasai, Komura Naoko,
Hiromune Ando, Ayuko Hoshino, Yasunari Yokota, Kenichi G.N. Suzuki*
*責任著者:
岐阜大学 糖鎖生命コア研究所 (iGCORE) 教授
国立がん研究センター 研究所 先端バイオイメージング研究分野 分野長
鈴木健一
DOI: 10.1038/s41467-025-57617-9
URL:  https://www.nature.com/articles/s41467-025-57617-9

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