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木塚グループの論文が“Communications Biology”誌に掲載されました

がん関連糖鎖の生産を細胞内で制御する仕組みを解明

~酵素の分泌が止まると細胞内で糖鎖の枝分かれが増加する~

 国立大学法人 東海国立大学機構 糖鎖生命コア研究所(iGCORE)の木塚康彦教授、平田哲也元特任助教らの研究グループは、広島大学との共同研究で、細胞が糖鎖の量や構造を調節する新たな仕組みを明らかにしました。

 がんに関わる糖鎖を作る酵素GnT-Vは、細胞内のゴルジ体という組織に存在しており、SPPL3という別の酵素で切断されることによって細胞外に分泌されることが知られている。本研究では、細胞の状態に応じて、GnT-Vが細胞外へ分泌され、その結果細胞内の量が減少することにより、糖鎖を作る活性が抑えられることがわかりました。

 本研究は、特定の糖鎖の合成が細胞内でどのように調節されているのか、という疑問の解明に向けて重要な知見を与えるとともに、糖鎖が関わるがんの悪性化の仕組みの解明にも役立つことが期待されます。

 本研究成果は、Nature 姉妹誌「Communications Biology」に掲載されました。

がん関連糖鎖の生産を細胞内で制御する仕組みを解明

 

【今後の展開】

 本研究により、がんに関連する糖転移酵素GnT-VがSPPL3により分泌され、その分泌は細胞の糖鎖が未成熟になると抑えられることがわかりました。これは、細胞が糖鎖合成酵素の切断を制御することによって糖鎖を作る活性を調節し、ひいては自身の持つ糖鎖の形を調節していることを示唆しています。GnT-Vの活性はがんの発症や悪性化を促進する効果があるため、分泌を介してGnT-Vの活性を変えるこの仕組みは、がんの悪性化に関わる可能性があります。一方、GnT-Vの切断には糖鎖末端のシアル酸が重要であることがわかりましたが、糖鎖の形が変わるとなぜSPPL3によるGnT-Vの切断の度合いが変わるのかはわかっていません。今後、SPPL3が糖鎖の形を見分けてGnT-Vの切断度合いを変える仕組みがわかれば、細胞の糖鎖の構造が変化する仕組みがさらに解明され、がんを始めとする糖鎖が関わる疾患の理解や治療薬開発に貢献すると期待されます。

 

【論文情報】

雑誌名:Communications Biology

タイトル: Shedding of N-acetylglucosaminyltransferase-V is regulated by maturity of cellular N-glycan

DOI番号: 10.1038/s42003-022-03697-y
論文公開URL: https://www.nature.com/articles/s42003-022-03697-y

論文内容に関する問い合わせ先: kizuka【at】gifu-u.ac.jp   (【at】を@に変えてください)

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