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Thaysen-Andersen特任教授らのグループの研究成果が”Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America”に掲載されました

免疫細胞をがんの味方に変える「糖鎖スイッチ」機構を解明

~既存の免疫療法と組み合わせた治療法開発に期待~

名古屋大学糖鎖生命コア研究所(iGCORE)のDipta Priya特任助教、マッコーリー大学のMorten Thaysen-Andersen特任教授(Macquarie University)らの国際共同研究グループは、名古屋大学医学部附属病院救急科の春日井 大介 病院助教、鬼塚 洋之進 医員らと共同で、腫瘍関連マクロファージ(TAM)注3)の細胞表面糖鎖を解析し、炎症促進型マクロファージではα2,3結合型シアル酸が、抗炎症型マクロファージではα2,6結合型シアル酸が相対的に多くなる「糖鎖スイッチ」が生じることを明らかにしました。さらに、抗炎症型マクロファージから、α2,6結合型シアル酸に富む動的な細胞突起が伸長することを発見しました。この特徴は、進行大腸がん患者由来の腫瘍組織においても確認されました。α2,6結合型シアル酸の形成に関与するシアル酸転移酵素ST6GAL1の発現を抑制すると、これらの細胞突起の形成が阻害されました。これに伴い、マクロファージの移動能、マクロファージ間および大腸がん細胞との相互作用が低下し、共培養した大腸がん細胞の増殖も抑制されました。
本研究は、抗炎症型マクロファージが糖鎖に富む細胞突起を介してがん細胞と相互作用し、腫瘍の進行を促進するという、これまで十分に認識されていなかった機構を明らかにしたものです。今後、ST6GAL1阻害と免疫チェックポイント阻害薬などのがん免疫療法を組み合わせた治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、2026年8月25日付で国際学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されました。

 

◆詳細(プレスリリース本文)はこちら

 

【ポイント】

・腫瘍を攻撃する炎症促進型と、腫瘍を支える抗炎症型のマクロファージでは、細胞表面のシアル酸注1)の結合様式が大きく異なることを示した。
・抗炎症型マクロファージから、α2,6結合型シアル酸に富む枝分かれした動的な突起が伸び、周囲のマクロファージや大腸がん細胞とのネットワークを形成することを発見した。
・糖鎖をつくる酵素ST6GAL1注2)を抑えると突起が崩れ、マクロファージの移動やがん細胞との接触が減少し、共培養した大腸がん細胞の増殖も抑えられた。
・ST6GAL1の抑制はマクロファージを炎症促進型に近い性質へ変化させ、ST6GAL1―α2,6シアル酸化注1)軸が新たながん治療標的候補となる可能性を示した。

【用語説明】

注1)シアル酸/シアル酸化:
糖鎖の末端に多く存在する酸性の糖と、それを糖鎖へ付加する修飾。α2,3、α2,6はシアル酸が隣の糖へ結合する位置を表し、結合様式によって認識される受容体や生物学的機能が変わる。
注2)ST6GAL1:
主としてN型糖鎖末端のガラクトースへ、シアル酸をα2,6結合で付加するシアル酸転移酵素。本研究では抗炎症型マクロファージで増加し、α2,6-シアル酸化突起の形成・維持に関与した。
注3)腫瘍関連マクロファージ(TAM):
tumor-associated macrophage。腫瘍の内部や周辺に集積するマクロファージ。周囲から受ける刺激に応じて、抗腫瘍的な炎症促進型から、免疫を抑えて腫瘍を支える抗炎症型まで、連続的で多様な状態をとる。

【論文情報】

雑誌名:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)
論文タイトル:ST6GAL1-mediated sialyl linkage switching drives cancer-promoting α2,6-sialo-protrusions radiating from anti-inflammatory TAMs
著者:Priya Dipta1,2,3, Naaz Bansal1, Arthur Chien1, Zeynep Sumer-Bayraktar1, Hironoshin Onizuka4, Daisuke Kasugai4, Dominique Marando5, Merrina Anugraham5, Seong Beom Ahn6, Daniel Kolarich5,7, Boaz Tirosh8, Rebeca Kawahara2,5, Arun Everest-Dass5, Morten Thaysen-Andersen1,2,*
所属:Macquarie University、名古屋大学、Hebrew University、Griffith University、Case Western Reserve University(詳細は論文参照)
DOI:10.1073/pnas.2623365123 
URL: https://doi.org/10.1073/pnas.2623365123

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