脳の糖鎖が伸びる仕組みを解明 〜脱髄に関わる糖鎖合成酵素GnT-IXの新たな機能〜
岐阜大学糖鎖生命コア研究所の木塚 康彦教授、自然科学技術研究科修士課程2年生の伊藤 智哉さんらの研究グループは、ミシシッピ大学、大阪大学、東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、脳においてO-マンノース(Man)型糖鎖と呼ばれる糖鎖が伸びる仕組みを解明しました。
タンパク質に付く糖鎖1)には膨大な種類が存在しており、その形はタンパク質によって異なります。これら糖鎖は、細胞の中で多くの糖鎖合成酵素2)の働きによって作られ、様々な疾患との関わりが報告されています。一方、糖鎖合成酵素の働きや糖鎖の作られ方を制御する仕組みについては不明な点が多く残されています。
本研究では、脳において脱髄(だつずい)3)疾患などに関わるO-Man型糖鎖4)に着目しました。O-Man型糖鎖は、脳に特異的に存在するGnT-IX5)(別名MGAT5B)と呼ばれる糖鎖合成酵素によって枝分かれ構造が作られます。GnT-IXは脱髄疾患や脳腫瘍との関わりが報告されていますが、その分子メカニズムはよくわかっていません。本研究では、GnT-IXを欠損するマウスの脳ではO-Man型糖鎖が伸びにくくなること、またO-Man型糖鎖を伸ばしてケラタン硫酸6)と呼ばれる糖鎖を作る酵素は、枝分かれしたO-Man型糖鎖に作用しやすいことが明らかになりました。本研究は、脳における糖鎖合成の仕組みの解明や、脱髄疾患の病態解明へつながることが期待されます。
本研究成果は、現地時間2026年1月7日にThe Journal of Biological Chemistry誌のオンライン版で発表されました。
なお、本研究は、文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業「ヒューマングライコームプロジェクト」による支援を受けています。

本研究の概要図
本研究のポイント
- GnT-IXは、O-マンノース(Man)型糖鎖と呼ばれる糖鎖の枝分かれを作る酵素で、脳に特異的に存在し、脱髄疾患や脳腫瘍などに関わることがわかっています。
- GnT-IXを欠損したマウスでは、O-Man型糖鎖が伸びた先に作られるケラタン硫酸と呼ばれる糖鎖の量が大きく減少していました。
- ケラタン硫酸合成酵素群は、枝分かれしたO-Man型糖鎖に作用しやすかったことから、O-Man型糖鎖の分岐は糖鎖を伸長させる役割を持つことがわかりました。
詳しい研究内容について
脳の糖鎖が伸びる仕組みを解明
~ 脱髄に関わる糖鎖合成酵素GnT-IXの新たな機能 ~
論文情報
- 雑誌名:The Journal of Biological Chemistry
- 論文名:Enzymatic basis of branching and extension of O-Man glycans for keratan sulfate biosynthesis
- 著 者:Tomoya Itoh, Hidenori Tanaka, Mohit Pareek, Masamichi Nagae, Hiroshi Manya, Akemi Ido, Sushil K. Mishra*, Yasuhiko Kizuka* (*共同責任著者)
- DOI: 10.1016/j.jbc.2026.111140





