糖鎖修飾酵素が、がん転移を制御する新たな分子メカニズムを発見
名古屋大学 糖鎖生命コア研究所の原田陽一郎特任教授らのグループが、糖鎖修飾酵素OSTががんの転移を制御する新しい仕組みを解明しました。
がんが他の臓器へ広がる「転移」は、がん治療における最大の課題の一つです。本研究では、細胞内でタンパク質に糖鎖を付加する酵素複合体「オリゴ糖転移酵素(OST)」が、がんの肺転移に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
OSTは、小胞体と呼ばれる細胞内の構造で働き、タンパク質の機能を調整する「N結合型糖鎖修飾」を担っています。哺乳類では、OSTには性質の異なる2種類(OST-AとOST-B)が存在しますが、これらががんの進行にどのように関わるかは、これまでよく分かっていませんでした。
本研究では、マウスのメラノーマ(悪性黒色腫)モデルを用いてOSTの解析を行いました。その結果、OST-AまたはOST-Bのどちらか一方を欠失させても、腫瘍の増殖には大きな影響がないことが分かりました。一方で、がん細胞が肺へ転移するためには、両方のOSTが同時に働くことが必要であることを発見しました。
さらに、OST-Aの内部には、糖鎖修飾の活性だけでなく、肺転移の成立にも重要な領域があることを突き止めました。
これらの成果は、がんの転移を引き起こす新たな分子メカニズムを明らかにするとともに、OST-Aの働きを選択的に制御することで、転移性がんを抑える新しい治療法の開発につながる可能性を示しています。
この研究は、2026年1月7日、Glycobiology誌オンライン版に掲載、Editor's Choice(注目論文)に選出されました。
- 雑誌名:Glycobiology
- 論文名:Functional inactivation of oligosaccharyltransferase A isoform suppresses tumor metastasis
- 著 者:Yang Shi , Yu Mizote , Akinobu Honda , Tadashi Suzuki , Hideaki Tahara , Naoyuki Taniguchi , Yoichiro Harada* (*責任著者)
- DOI: https://doi.org/10.1093/glycob/cwag003






